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――“内浦”のスクールアイドル 『ラブライブ!サンシャイン!!』第六話感想

 今回はレビューを書く意味があるのかと思った。なぜなら一話としての完成度もさることながら、前半戦のクライマックス として見ても文句のつけようがない出来だと感じたからだ。今回の六話は、アタマでの理解を超え、直感で理解する、感覚を揺さぶるものだったのではないかな と。
 それではこの秀逸な六話を、千歌たちの目線で振り返っていきたい。

 

 

 

◆気づかなくてはならないこと

 今回の話は、廃校阻止のために内浦の魅力を伝えるPVを作ろうと動く→出来た映像を一度マリーに見せるがドギツク指摘される→海開きで街の人々が繋がる光景を見て、改めて内浦の良さを理解するという流れだ。
 本エピソードで問われたのは、「Aqours」が“内浦”のスクールアイドル足りえるのかという点である。

  廃校阻止のため、千歌たちは一度「µ's」の足跡を探ってみるが、有効な手段は見つからなかった。それはそうだ。「µ's」の場合、スクールアイドル黎明 期だからこその利点があったからだ。その利点とは、「音ノ木坂にも今流行りのスクールアイドルがいる」というアピールだけで事足りていたことである。つま り、9人の女神は、人々を惹きつけるパフォーマンスを積み重ねることに注力することで廃校を阻止したのだ。
 かと言って「µ's」が、音ノ木坂ひ いては秋葉原のスクールアイドルとして自分たちが暮らす場所への理解を持っていなかったわけではない。『ラブライブ!S1-9』で描かれたように、彼女ら は自然と自分たちが帰属する場所の魅力を知っていた。音ノ木坂があり、アイ活の拠点である秋葉原。そこは新しいモノ古いモノ問わず、何もかもを受け止める 場所である、と。そして、「µ's」それ自体が、9人の抱く情熱を受け止める場所だ。つまり、「µ's」は、“音ノ木坂”、“秋葉原”の良さを自然と内包 していたスクールアイドルであったと言えるだろう。

 では、内浦の良さとは何だったのか。ここまで 「Aqours」のドラマを見てきた人はすぐ分かるだろう。それは人々の繋がりだ。手を繋いだり、手を重ね合わせたりして行うコールを筆頭に、本作では 「繋がる」ことを丁寧に描写している。親友の本気を感じ取った曜。梨子の悩みに向き合い続けた千歌。花丸とダイヤへの思いやりで自分のやりたいことを押し 殺してきたルビィ。これら以外にもたくさんあるが、“輝きたい”という願いだけではなく、誰かと繋がろうとするメンバーたちのドラマも本作では描かれてい た。
 海開きいう行事に地域の人々も自然と集まる光景を見て、梨子や千歌は内浦の良さを肌で感じた。そして、内浦の魅力たる「人々の繋がり」は、 3話でも描かている。志満ねーちゃんが曜へ送ったエール「大丈夫、みんな温かいから」や、大雨の中ライブに訪れた町の人々がまさに「繋がり」そのものだの だ。
 自然、地形、交通網、人口、商業活動の賑わいなど、町の良さを計る観点はいくるもある。最初は千歌たちも富士山の景色やアーケード街などを 魅力として紹介してきた。それは確かに内浦にある良さの一例だが、別に他の街にだって代替的なものがあるだろう。そうではなく、本質的な内浦の良さを千歌 たちは見つけなければならかった。街の魅力は、そこで暮らす人々の息づかいである。そして、学校とはそうしたその土地に生きる人たちが持つ特色を色濃く映 す場所なのではないだろうか。だから、“内浦”の学校に所属する「Aqours」は、自分たちの生活の土台となっている街の魅力に気づかなくてはならない のだ。

 

 

 

 

◆おらが町のスクールアイドル

  田舎というのは、若者にとっては退屈な場所かもしれない。変わり映えの光景と日々、ワクワクやドキドキを喚起するような出会いなんて望めない、本気で取り 組みたいものが分からない。田舎は、刺激や冒険を望む十代からするとある種の砂漠なのかもしれない。事実、千歌は東京に出るまで、やりたいことが見つから なかった。
 風の誘いにより、千歌は初めて本気でドキドキするもの、やりたいことを見つけた。田舎では無謀な挑戦と言われても、「あの人たちみた いにやってみたい!」という憧れのみで進んでこれた。しかし、憧れだけでは廃校の危機を回避できない。自分たちを支える場所の力を感じ取れなけばならな い。町の人々との繋がり、“内浦”のスクールアイドルならではのストロングポイントをようやく理解したからこそ、千歌は自信を持って「この場所から追いか けて見せる」と言い切れた。この時「Aqours」は、“おらが町の”スクールアイドルへと変貌したのだ。

ところで、やっぱりこの高海千歌という子は地に足ついてる。場当たり的で無軌道に行動するところも目立つけど、地道に答えを見つけていくところが一番の魅 力だ。喫茶店での作戦会議後の梨子との会話、PVを否定したマリーとのやりとり。何回も言ってるけど、千歌には全てを受け止めて前進できる力がある。

 

 

 


 今までのエピソードで描写を積み重ねてきたので、「ああこういうことか!」ってパンパン頭の中で話が展開するすごく気持ちのいい回だった。ストーリーマップが整理されているねぇ。
 ライブパートは、海開きの灯りとして使われていた提灯をスカイランタンへと見立てた演出に唸ったよ。歌も「繋がり」をトビラや階段に見立てていて、ようやく千歌が二話で言っていた「ユメノトビラ」っぽい曲がきたなと思った。
  常に厳しいハードルを課すマリー、いつもいいタイミングで助けたり声をかけるダイヤ、物理的な距離も気持ちも遠いけど必ず見守ってはいる果南。三者三様の 「Aqours」との繋がり方が面白い。あとマリーって戦友であったダイヤ果南にだけはカタコトじゃないんだよね。そこの見せ方も興味深いね。

 ちょっと余力があれば、前半戦の総括をしたいと思う。