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――海に眠る原石は太陽のように輝けるか?『ラブライブ!サンシャイン‼』第一話感想

(表記について。『ラブライブ!』一期第一話→『ラブライブ!』S1-1)


 企画立ち上げからはや一年、鳴り物入りでアニメ化された『ラブライブ!サンシャイン‼』。どんな始まりか期待していたが、少々期待しすぎていたようだ。


  第一話をまとめると、主人公 高海千歌がスクールアイドル部設立を目指す中で、桜内梨子と運命の出逢いを果たしたところまでを描いていた。みも蓋もなく言えば、千歌と梨子の出逢いと、 千歌のスクールアイドルへの憧れが本エピソードの縱筋。この縱筋の中で、千歌と曜の関係性という横筋を展開している。千歌を起点として二年組の紹介と交流 がメインプロットだ。
 個人的には、千歌の描き方と千歌と曜の関係性はとても興味深かった。

 

◆“普通の人” 高海千歌

 「自分は何もない普通の人間」と本人すら自嘲気味に語ったが、このスタートの切り方はなかなか面白かった。というのも、やっぱり「高坂穂乃果はチートだった」から。

 一度目標が定まれば、穂乃果はそこに至るまで圧倒的な爆発力で突き進む。そのパワーは、長年の友達である海未ことりが「いつもすごい景色を見せてくれる」と評するほど。常に仲間に寄り添い、ひっぱっていくμ'sの太陽だ。はっきり言って「普通」じゃない(笑)。

 ただ、「普通ではない」穂乃果と比べなくとも一話では、

・高飛び込みで活躍する親友・曜を誇らしく思うものの、特筆すべき才能が(※まだ)見当たらない自分と比較し、コンプレックスを抱いている
・一年時に部活に全く興味を示さなかったように、何か打ち込みたくなるものがなかった(イマドキの若者っぽいのかな?)
・「海の音を表現する」ためだけに海に飛び込もうとした梨子(=音楽への強烈な熱意とそれを支える才能)

と、意図的に「彼女は普通である」ことを強調されている描写が見られる。

  俺はこの描き方を歓迎すべきだと思う。それは、スクールアイドルらしさに繋がるから。前作『ラブライブ!』シリーズで通して描かれていたが、スクールアイ ドルとは「やりたいからやる」ものである。やりたいことも、やりこむほど得意なこともない千歌がようやく見つけた熱中したいものが、「やりたいからやる」 スクールアイドルであることは、とても面白いんじゃないかなと。
 穂乃果は、廃校阻止のためのアイ活から「やりたいからやる!」というスクールア イドルの真髄に辿り着いた。廃校阻止は分かりやすくフックのあるお題目だが、本作ではそれを使わないことで地道にスクールアイドル“Aqours”を描こ うとする気概を感じる。また、こうしたスクールアイドルへの思いへの変遷は、穂乃果との対比にもなるんじゃないのかな。
 「µ'sへの憧れ」と「やりたいからやる」がどのような物語を描くか見てみようじゃないか。自身を“普通”と称する千歌はこの先どうなるのか。このまま「普通」で終わるのか、なんらかの「非凡さ」を発揮していくのか?内浦の海に眠る原石の今後に注目したい。

 

 

◆千歌と曜の距離感

 この距離感いいね。すごくいい。みんないいと感じた部分かと思うので、ここはあまり長々と語らない。基本的には対等な感じなんだけど、「曜ちゃんすげー や」と少し劣等感を抱いている千歌。純粋に千歌のアイ活を応援し、兼部を決めた曜。このちょっとしたすれ違いがどう展開されるかも楽しみ。

 

 

◆なにがダメだと感じたのか?

  思うに、ストーリーのリズムが悪い。回想を挟みつつも、一話では部活勧誘をしていた入学式から運命の再開を果たした始業式までの二日間を描いている(入学 式:9割、始業式:1割ほどの配分)。なので、入学式のほぼ丸一日をじっくり描いたかのように見える。しかし、果たしてそうかというとそうではなく、速い テンポでシーンを回しており、場面の転換も多かった。ただ、このテンポは心地の良いものではなく、無理矢理シーンを繋いでいるようにしか感じ取れなかっ た。

 その理由としてシーンや描写の取捨選択が挙げられる。なんでもかんでも9人出して、千歌と絡ませればい いってもんじゃあないぜ! ノルマなんですかね、なんとか9人出して顔見せ紹介したのは頑張ったと思うよ。だが、それでも不自然さというか、「いやそれい らないだろ。マリーとか別に次回登場でもいいだろ」と思わずにはいられない。
 この顔見せについては、『ラブライブ!』S1-1が白眉だった。自 然にキャラたちを登場させており、無理に穂乃果と絡ませることはなく、彼女の背景でしゃべり動く姿が描かれていた(ある種群像劇的な演出法)。なので、 「ここからどう絡んでいくのか?」という期待感を煽られていたし、S1-1は穂乃果たち二年組の一挙一足に集中できた。

  ところが、今回はキャラの特徴にまで踏み込んで紹介したため、どこに視点を置けばよいかわかりづらいシーンが出てくる。例を挙げれば、一年生組との邂逅。 花丸の「づら」から始まり、ルビィの極度の人見知り、ヨハネの厨二さと彼女たちのキャラを演出するんだけど正直くどいし、千歌・曜が勧誘頑張ってるのを描 きたいのか、三人のキャラを描きたいのかはっきりしてくれ。どうしても顔見せはしておきたいのであれば、分かりやすいキャラづけは後にして、もう少し自然 に交流する様を描いた方が滑らかだったように思える。
 顔見せとキャラ紹介をとにかく消化したいのか、雑な描き方になっていた部分がある。これに 合わせて三年生絡みの伏線を置いていくもんだから、実のところは「詰め込んでいる」というよりも「とっ散らかっている」印象を抱く。千歌と曜、千歌と梨子 の交流はなかなかよかったのだから、こちらにもっと時間を割いてもよかったのではないだろうか。あるいは、もう少し千歌のスクールアイドルへの憧れや動機 を見せても面白かったのかもしれない。

 あと流石に、ミュージカル後の「ごめんなさい」は盛り下がる。これも第 一話に挿入歌を入れる制約があったからなのかもしれないけど、「ススメ」や「Future style」を想起させる楽曲をやった後に「ごめんなさい」って可能性感じねーよ!! 「ごめんなさい」で幕引き自体はフックになるし、面白いからそら大 賛成よ。でも、それなら「Hand in Hand」を歌うのを千歌・曜のみにしたり、話の構成変えたりしなさいよ。未来を予感させる歌の後に「ごめんなさい」は、視聴者の気持ちからするとやっぱ り「なんでやねん!」ってなっちゃう。

 「ススメ」の勢いをそのまま追い風に一話を締めくくった『ラブライブ!』S1-1との差をここでも感じる。もし、この「オイ!」ってなる心理も織り込み済みの設計であれば、俺は大胆すぎると思うね。

 

 

◆まずは三話まで

一先ず第一話の振り返りは以上にしたい。ここからどうなるのかは、相当楽しみにしている。パイロットにあたる第三話まで観て、また改めて全体的なレビューをしたい。なるべく毎回感想をアップしたいところですわ。