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――ダイスキの守り人 『ラブライブ!サンシャイン!!』第三話感想


 やはり予想通り、三人の初ライブを描いた第三話。ここをどう作るかが前半戦一番の見所であり、本稿ではそこについて筆を進めたい。

 本論へ入る前に以下小ネタ。
・善子来ちゃったよォォ~~!この子ようやく学校に来たよォォォォ!!登校日じゃないから非公式記録だけどな!!(キリッ)それはそれとして、「Aqours」の山あり谷ありなライブは彼女の中に何かを残した様子。果たして彼女の物語はどう展開されるのか。
・ 小原家金持ちすぎワロタwwww娘に理事長職を与えるほど寄付してるとか、浦の星女学院関係者はマリーのパッパに頭が上がりませんなあ。てか、鞠理事長と ダイヤけっこう仲いいじゃないすかあ。もうちょっと拗れてるかと思ってたわー。千歌たちに敢えて高いハードルを課したのはなんでですかねえ。それくらい乗 り越えなきゃダイヤと“誰か”から認めてもらえるスクールアイドルにはなれないという彼女の計算なのかな。
・花丸×風呂敷のカップリングが一番好きです、はい。似合いすぎでしょあれ。
・そして、渡辺曜さんチートすぎやしませんかねぇ?身体能力・ダンスのチェック・衣装デザイン・衣装制作・常識人枠・明るく打ち解けやすい、ウルトラマンゼロ並にスペック盛ってますなあ……。
 ・ 果南さん、ラスボス感マックスじゃないすか。一人講堂の外で聴く姿はとても強そうでしたわ(小並感)。内浦から離れた離島で暮らす彼女がなぜライブを知っ ていたのか。千歌らがメールでもしたのかねえ。なぜ会場へ来たのか?ここに何かドラマが隠れていそうだ。彼女はスクールアイドルという言葉に陰りを見せる が、µ's=スクールアイドルであることも知っている。ここらへんの描写が後にどう展開されるか、なによりもマリーとの邂逅がとても楽しみだ。

それでは以下、とりとめもない感想。

 

 

◆なんだかんだで見守ってくれた人

 豪雨と電線破壊という攻略不可に等しい壁のせいであるが、はっきり言って三人だけでは「Aqours」のファーストライブは大失敗していただろう。けれども、なんとか成功に漕ぎ着ける。そこにはある二人の計らいがあった。

  まずは、千歌の姉の一人である美渡ねーちゃん。振り返ると、彼女は一話からずっと千歌のスクールアイドル活動をけっこう近くから見ていて、三話でも曜にア イ活とライブについて聞くほどだ。いつも千歌とは軽妙なやり取りをしているけれども、彼女はずっと「Aqours」を見守っていたように思える。千歌の本 気度を見て聞いた彼女は、開始時間に遅れつつも多数の同僚を引き連れ、心が折れた妹にいつもの軽口で「頑張れ!」とエールを送ったのだ。なかなか粋なこと をするねーちゃんだなあ。千歌はきっとあの夜さらにプリンを献上しただろう(笑)。

 もう一人は、ご存じ硬度 10のラブライバー・ダイヤ。敵対関係に近いながらも、彼女もまた、美渡ねーちゃんと同じく一話からずっと「Aqours」を見てきた一人だ。豪雨の中 ちゃんと開場時間にいるわ、電力を手早く復旧させるわと、とても面倒見がいいじゃないすか!! さらには「スクールアイドル人気を育んできた過去のアイド ルと、町のみなさんのおかげであることを忘れるなよ」と、ちゃんと苦言を呈するのも忘れない。なんて素晴らしい先輩なんや。こうまで支えてあげた動機は何 かが語られる日がとても楽しみである。

 『ラブライブ!』シリーズにおいて、見守る人たちに支えられるって演出は珍しいように思える。まだ始まったばかりのアイドルと、それを支える人。これは、現実世界における『ラブライブ!サンシャイン!!』が置かれている現状を模した描き方なのかもしれない。

 

 

◆癖?設計?計算?

  三話まで観て、本作の作劇手法で特徴的に感じるのは感情線の運び方。これは酒井監督の癖なのか、はたまた脚本・花田氏の癖なのか、あるいは狙った演出なの か? 制作インタビューが上がってこない内は真相はまだわからないが、とにかく感情線の運び方がストレートではないなと思った。
 今回の三話は特にその傾向が強く、視聴者はけっこう疲れたんじゃないかな。「え?まだなんかあるの?」と思ったんじゃなかろうか。

  「観客0を不安に思う(-)」→「マリーの言葉通り満員にできず解散が確定するものの、目の前にいる観客のために歌う(+)」→「電力供給が途絶えライブ ができなくなり戸惑う(-)」→「急場しのぎながらもアカペラで歌い出す(+)」→「けれども心が折れる(-)」→「大勢の観客の来場と電力復活により、 息を吹き返す(+)」

 ()で示したのは場面ごとの感情の推移なんだけど、紆余曲折ってレベルじゃねーぞ! 何 回も緊張状態をつくるもんじゃあないぜ。山谷を作りすぎてるよ。普通のドラマパートでやる分には、こういう緊張状態が続く展開もいいと思うんだよね。シリ アス系の話の方が俺好きだし。でも、ライブパートでいちいちそれを挟むのはどうなのか?という疑問が拭えない。やっぱり『ラブライブ』シリーズで一番観客 の気持ちが乗るシーンは、ライブパートなわけで。あのパートで得られるカタルシスがとても快感だったわけで。ライブシーンで生じる感情の高鳴りを滞らせて しまうのは正直危険じゃないのかと。
 
 当然今回みたいにライブの合間にドラマ要素を挟み込む演出手法自体は、しかるべき時ならば使って いい。でも、その肝心な使い方が難しいと思う。やっぱライブシーンで湧き上がる感情をブッチ切られるから。そこを如何に上手く繋げていくかってのが腕の見 せ所なんだけど、三話の演出は巧くないなと正直感じた。
 三人が息を吹き返した要因は、つまるところ街の「みんなが来てくれたから」である。しか し、それは広報活動を頑張った成果であり、電線ブチ切れるほどの豪雨でなければ、彼女たちは最初から賑やかな会場でパフォーマンスできた可能性がある。そ して、同僚たちを連れてきた美渡ねーちゃんの尽力も忘れてはいけない。後から振り返ると、「やったぜ!復活したぜ!」って感情よりも「これ実は苦境になっ てないんじゃあ・・・」という認識の方が強くなる。

 アカペラで歌い出すところまでは「おお、ええやん。まだア カペラがある!」って俺も気持ちが乗ってて、心が折れたところも「まあそらそうやろなあ。でも、パフォーマンスをしきれずに終わるとかアイドルとしてス テージに立っていないようなもんじゃないですか(泣)」って気持ちは彼女たちに寄り添ってたんだけども、実は美渡姉ちゃんの一言で「そうきたかー」ってな んか微妙な気持ちになっちゃった。なんでかというと、「ファーストライブに姉妹愛まで盛り込んでくるのかよ」と、要素多すぎないかと思ったからだ。加え て、エールを送って千歌を励ました描写が少し分かりづらいものであったことも影響しているだろう。

 電源復活も なあ……。ダイヤのアシストのおかげではあるけど、このサポートが、視聴者側に“燃え”を感じるほどの行為であったかというとそれは少し違う気がする。ダ イヤと千歌・梨子・曜の関係性は、まだ“燃え”を感じさせるほど育まれていないはずだ。だから、二年生組(もっと言うと視聴者)の感情とマッチしていな い。「ダイヤなんだかんだで面倒見いいな」とキャラは伝わるんだけどね。

 三人の「ファーストステップ」では、 大きく①集客の悪さと②電線の脱線による会場設備の全滅の二点が壁として立ちはだかった。しかし、結局のところ①(結果論だが)集まりが悪かったけれども 集客自体は成功しており、②知らない間に蓄電池を用意してもらったわけで、自分たちの力で危機を乗り越えたという印象がとても弱い。
 集客はまさ に彼女たちの努力だし、まばらな会場と停電という二つの壁に立ち向かおうとしたのだけど、最終的には折れてしまったのには変わりがない。息を吹き返した理 由は、「たくさんの観客が来てくれた」おかげである。この「ファーストステップ」で描かれたのは、そういうおんぶに抱っこな有様で、主役の恰好がほとんど ついていないライブシーンなのだ。
 これがね、アカペラで乗り切ったっていうものだったら、俺は「やるじゃないか!」ってなっていたと思う。見せ 方として面白いし、その方がコンパクトに纏まってて感情の波もスッと入るようになったはず。危機を二重三重にし、そこに美渡ねーちゃんやダイヤを盛り込む もんだから、話の筋や状況が把握しづらい。状況が認識しづらいので、観る側の感情も遠のく。三話まで観て感じるのは、各エピソードに盛り込む要素や話の展 開、演出がチグハグでスマートに纏まっていないことだ。